「今回のイベントの会場はスクワットを予定している。」
8月頃に、僕をイタリアに招聘してくれたルカ(Daimon Chip)から英語で送られてきたメッセージだ。
スクワット…?
多分ほとんどの人はコレ↓を想像するだろう。(僕もコレかと思った。)
色々調べてみると日本にはない文化で、ライブができるかなりアンダーグラウンドな場所であることがわかった。
(スクワット自体についてもこの後簡単に説明する。)
で、先にイタリアのスクワットで僕が感じたことをまとめておくと、
- アンダーグラウンドな芸術がひしめきあっている
- そこに住む人たちや、そこに集まる人たちの心の温かさが素晴らしい
- 最高の経験をさせてくれた、最高の環境
という感じだった。
これらについて僕が聞いたこと、感じたことを書いておくので、
イタリアのアンダーグラウンドミュージックシーンに興味のある人はぜひ最後まで読んでみてほしい。
そもそも”スクワット”とは?
“スクワット”を一言で表すなら、“持ち主に無断で占拠された場所”である。
アナーキズム、反体制主義、自治主義、貧困問題など、様々な社会的・政治的な動きから1960年頃から始まった運動で、いまだ占拠が続いているそう。
ヨーロッパ圏では様々な国に存在しているようで、様々な芸術活動の拠点になっている。
情報量が少なく、合法性についてはクエスチョンマークであるが、グレーゾーンを攻めた運動であるようだ。
色々調べてみたけど、イタリアで合法なのか非合法かはクエスチョンマークだった。
ちなみに、無断占拠している関係からか、水回りなどの衛生面はあまりよくない様子。
1つ目のスクワットのライブ会場用のトイレは和式っぽいやつで、ペットボトルで水を流すような感じだったし、臭いも結構キツめだった。
ちなみに建物は1300年代に建てられた農家の建物らしいので古い設備なのも納得だし、その頃の建物が未だ使えるというのが驚きである。
2つ目のスクワットは洋式だったが、こちらもバケツで水を流す感じ。
ただ、スクワットに住んでいる人が定期的に清掃しているので、かなり綺麗な状況が保たれていた。
また、自治主義ということで、僕が言ったスクワットでも、
「スクワットでは何事も全員の意志で決めることが大事なんだ。」
と言っていたことが印象に残っている。
1つ目の会場について、駐車場から入り口までの動画を撮っておいたのでアップロードしておく。
雰囲気でスクワットがどんなところか感じとってもらえれば嬉しい。
ちなみに周りの街並みもこんな感じ。
夜にふらっと出歩いたらヤバそうな雰囲気を感じる街並みであった。
日本語のwikiに”スクワット”はなかったが、そこに暮らす”スコッター”についてのwikiがあったので、スクワットについてもっと詳しく知りたい人はこちらをご覧いただきたい。
スクワットではアンダーグランドな芸術がひしめき合っていた
スクワットは音楽を楽しむだけの場所じゃなく、絵をはじめとするアート作品を沢山目にすることができた。
特に印象的だったのは入り口の壁に書かれた大きなこちらの絵である。
3名の女性が描かれているこちらの壁画は、イタリアのパルチザン武装蜂起の有名な写真を書いたもの。
イタリアのパルチザンはナチ・ファシストと闘い、独裁政権から自由を取り戻した人たちである。
帯同してくれたルークも、ファシストとの闘いはイタリア人にとってとても重要なものだと話していた。
夜中に生で見たこの壁画はなんとも言えない存在感があった気がする。
僕がイタリアの音楽家と繋がった『Bella Ciao』という曲のカバーでもこの壁画の元になった写真を使ったこともあって、なんだか感慨深いものを感じた。
自由は当たり前のものじゃなく、行動したからこそある物であることを忘れちゃいかんなぁとしみじみ。
スクワットには、パルチザンの女性の壁画の他にも様々なアートが置かれている。
例えば居住区に2つある部屋には対になるアートがあって、
片方の部屋はLSD見た良い幻覚を表したオブジェやペイントが施され…、
もう片方の部屋はバッドに入った時の幻覚を表したものになっていた。
そのほかにも車やバイクのスクラップで作られた猿が置いてあったり…、
あちこちの壁に絵とメッセージが書き込まれていたり…、
とにかく色々なアートがスクワットにはあった。
それぞれのアートにそれぞれのメッセージがあることも教えてくれて、色々な作品を解説付きで見ることができた。
ヨーロッパの観光名所を色々見てきたけど、同じくらい、むしろそれ以上になにか心に語り掛けてくるものがあった気がする。
アンダーグラウンドな芸術に出会える、非常に貴重な体験ができて嬉しかった。
(色々な事情があって写真はとれなかった。とにかく、アンダーグラウンドな場所なので。)
何より、スクワットに住む人、集まる人達の心の温かさは素晴らしかった
思い出すだけで泣きそうになるくらい、スクワットに住む人や集まる人はとてもやさしかった。
ドイツ、スイス、イタリアを旅してきたわけだが、当然日本語は通じない。
それどころか英語も通じない場面もあったりして、道中結構ナーバスだった。
バスでイタリアについて、早々ハンドバッグから財布がなくなって泣き叫んでいる女性を見たもんだからナーバスもナーバスである。
そんな中、まず出迎えてくれた0r4とDaimon Chipはホテルのチェックインもやってくれたり、
(チェックインはマジでめっちゃ助かった。2人はいなかったらチェックインできていたかカナリ怪しい。)
ローマのライブ終了後のホテルまでの送迎まで至れり尽くせりで帯同してくれたおかげでなんとかライブまでたどりつくことができた。
本当にありがたいかぎりである。
彼らも素晴らしいチップチューンを作っているので、ぜひ聴いてみて欲しい。
スクワットに着いたら、まず65歳くらいの男性が迎えてくれたんだけど、
『ユスケ(僕のことだ)!机運ぶの手伝って!』
『ユスケ!俺はこの日本人のアーティストが好きなんだが、知ってるか?!』
『ピザ焼くけど、喰うか?!』(全部英語)
とめっちゃフランクに関わってくれた。
実際にスクワットに住んでいる人達とピザを食べたり、設営を一緒にやったり、すごくアットホームに過ごせたおかげでナーバスは完全に吹き飛んでいたのである。
ちなみにピザはピザハットのMサイズのピザを1人1枚食べていた。
イタリアでは1人1枚ピザを食べるという話は事実である。
食べてみたんだけど、本場の焼きたてピザはマジで最高にウマかった。(ちなみにマルゲリータ。)
めっちゃうまかったが、量がすさまじく、2ピースほど残してしまったのが未だに心残り。
2つめのスクワットでは少し日本語を話せる青年が沢山話しかけてくれた。
イベント中も常に気遣ってくれて、広い会場で僕を探してお茶(鉄瓶の日本茶!めっちゃうまかった。)を持ってきてくれたり、
日付が変わる時間、ライブをいったん中断して僕の誕生日を祝ってくれたり、
とにかくみんな優しく、最高な人達。
イタリアンチップチューンもゴリゴリのハードコアで最高でした。
一番クレイジーだったのはローマで共演したParty Molester。
メンバー構成は、
- ゲームボーイ 1名
- Party Molester 多数
という構成。
Party Molesterは屈強なイタリア男子で構成されており、バニーガール姿で水鉄砲や花火、お酒などを振り回している。
ゴリゴリのチップチューンガバサウンドが鳴り響くなか、屈強な男たちのパフォーマンス。
もう何がなんだかわからないが最高である。
スクワット、アンダーグラウンドな場所な分じぶん達で決めたルールは徹底されているようで、物が落ちても無くなることはない(自分に届けてくれた)し、助け合い・お互い様の精神をいたるところで感じることができた。
実際、ステージに鍵を落としたり、お金を落としたりしても全て戻ってきたのである。
これがローマ都市部なら戻ってくる確立はほぼ0%だろう。
(それどころかスリに会う可能性もある。)
スクワットという場所はアンダーグラウンドではあるが治安はとても良く、居心地のいい場所だと感じた。
ローマのイベントは21時に始まって、10時ごろまで延々とハードコアが鳴っているイベントだったんだけど、
自分が疲れているのを見て住んでいる人がベッドを貸してくれたり、
お腹は減っていないか気にかけてくれたり、
とにかくスクワットの人たちのやさしさが長旅で疲れた自分の心にどっぷりしみ込んだのである。
スクワットでの時間は本当に最高だった。
スクワットでのライブ、とにかく楽しかったです。
自分のライブを振り返ってみても、最高だったの一言である。
1日目は海外初ライブだし、イタリアンチップチューナーの大御所、kenobitの後ということで気合が入って気持ちの入ったステージができたと思うし、
2日目の1時間というロングセットも序盤機材トラブルでテンパったけどゴリゴリハードコアセットをプレイして最終的にはモーターヘッドのレミーみたいな人が僕に手を差し伸べてくれて客席にダイブするという最高の経験ができた。
気持ち的にはSchool of Rockのジャックブラックの気分。最高すぎる。
ちなみに2日目の出番は1時45分予定だったが押しまくって4時30分だった。
自分のステージ中盤の記憶はほとんどないがみんな楽しんでくれていた様子だけは覚えている。
ライブで気持ちを入れすぎたせいか、屈強な男性に、
『お前とドラッグをキメたいんだ!あっちいこうぜ!!』
と言われたあの瞬間を僕は忘れることはないだろう。
(ちなみにちゃんと全力でやんわりと拒否してクリーンな身体で帰ってきました。)
スクワット、不法占拠しているということもあってその場所のルールを守れば何でもアリという感じがした。
6時ごろに眠くて会場のソファーで少し仮眠して起きたとき、鼻から謎の粉を吸引している人がいたんだけど、あれはきっと夢だったんだろう。きっと。
スクワットは僕に最高の経験をプレゼントしてくれた
優しくて楽しいイタリア人に囲まれて誕生日にライブをする、こんな幸せなことがあるのだろうか。
スクワットに集まる人達はみんな優しくて、最高の環境でライブができたことは本当にありがたいことだ。
2015年にyukkeromとしての活動を始めたとき、
「北海道外でもライブができたらいいなぁ…。」
なんて思ってはいたが、まさかイタリアでライブができるなんて夢にも思っていなかった。
僕の曲を聴いたルークからのメッセージから始まったご縁、本当に人生何があるかわからなくて面白い。
いつかまた、イタリアのスクワットでもう一度プレイしたい。
そんな想いがフツフツと沸いているので、曲を作って良いライブをして、またイタリア遠征に望みたいと思う。
長くなったが、スクワットでの経験は僕にとってかけがえのない財産になった。
もしスクワットに行く機会がある人がいたら、怖がらずに行ってみてほしい。
優しい人たちと様々なアートがあなたをまっているだろう。
それでは今日はこの辺で。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!