結論:小規模な組織でも、総務相談ボットは十分役に立つ
中小規模の組織でも、総務相談ボットは業務削減につながる。
私は現在、試験的にNotebookLMを使った総務相談ボットを導入しているが、総務に寄せられる相談への対応時間はかなり減り、対応の質も上がったと感じている。
しかも、導入にあたって追加でかかった費用は、今のところゼロである。
必要だったのは、自分が資料を整理し、設定するための時間だけだった。
私の勤める組織は、いわゆる中小企業に近い規模の組織である。
それでも十分に実用性があり、むしろ
「専用システムを導入するほどではないが、問い合わせ対応には困っている」
という小規模な組織にこそ向いているのではないかと感じている。
たとえば総務には、次のような相談が日常的に寄せられる。
「親族が入院したのだけど、何日休めるんだっけ……?」
「産休や育休について聞きたいのだけど……」
「前歴を考慮して、仮の給与額を計算しなければならない」
こうした問い合わせは、一つひとつは小さく見えても、積み重なるとかなりの負担になる。
だからこそ、総務相談ボットには実務上の大きな価値があると感じている。
そもそもNotebookLMとは何なのか
NotebookLMは、自分で集めた資料を読ませ、その内容をもとに質問に答えてくれるGoogleのツールである。
PDFやGoogleドキュメント、Webページ、音声などを入れておくと、内容を要約したり、「この資料には何が書いてあるのか」といった問いに答えたりできる。
便利なのは、インターネット上のあいまいな情報ではなく、自分が入れた資料をもとに答えてくれる点である。
そのため、社内ルールやマニュアル、FAQのように、手元の資料をもとに確認したい場面と相性がよい。
私は今年1月に労働組合の役員会でNotebookLMを知り、使ってみることにした。
最初は、資料と録音データをもとに議事録や研修の要約を作成したり、事前配布資料を取り込んだうえで研修に参加したりといった使い方をしていた。
その中で気づいたのが、
「これを社内規程に使えば、総務相談ボットになるのでは…?」
ということだった。
なぜ総務相談ボットを作ろうと思ったのか
私は社内で総務を統括する立場にあるが、総務担当職員には同じような質問が何度も寄せられていた。
「年休について教えてほしい」
「身内に不幸があったのだけど、何日休めるのか」
「新しく入る人の給与の目安を出してほしい」
こうした相談に答えるには、担当者が該当する規程を探し、内容を確認し、必要に応じて関連する規程も見直したうえで回答しなければならない。
すべての規程が頭に入っていて、すぐ答えられるのが理想ではあるが、現実にはそうはいかない。
しかも、規程は法改正や運用の変更に応じて見直しが必要である。
一つの規程を修正すると、別の規程との整合性も確認しなければならない。
総務の仕事は”問い合わせ対応”と”規程管理”の両方があり、その負担は想像以上に大きい。
だからこそ、資料をもとに回答してくれるNotebookLMは、この課題にかなり合っているのではないかと考えた。
作り方は驚くほどシンプルだった
実際の作り方は、とても単純である。
まず、社内で使っている規程類をPDF化。
次にNotebookLMを立ち上げ、そのPDFをまとめてアップロード。
やることは、基本的にはそれだけである。
あとは、そのノートに向かって質問を入力すれば、アップロードした規程を参照しながら回答してくれる。
私は部下と一緒に試し、問題なく使えそうだと確認できたため、試験的な運用に踏み切った。
もちろん、現時点ではAIの回答をそのまま最終判断にしているわけではない。
あくまで「確認を早くするための補助」として使い、最終的な判断は職員が行うという前提で試用している。
NotebookLMを使ってみてわかった、一番大きな効果
実際に使ってみて最も大きかったのは、よくある質問への一次対応が一気に楽になったことである。
これまでは、質問を受けるたびに規程を探し、該当箇所を確認し、必要に応じて別の規程も見比べながら答えていた。
NotebookLMを使うと、少なくとも「どの規程のどのあたりを見ればよいか」がすぐわかる。
これだけでも、対応の初動がかなり速くなる。
また、自分の考えていた回答とAIの回答を見比べることで、ダブルチェックのような使い方もできた。
つまり、単に問い合わせ対応が速くなるだけでなく、回答の確認にも役立つのである。
想定外だったが、規程の整合性チェックにも効いた
使ってみて特におもしろかったのは、総務相談ボットを作る過程そのものが、規程の整理にもつながったことである。
別々のファイルで管理していた規程やルールを横断して見られるようになったことで、表現のズレや更新漏れ、似た内容の重複に気づきやすくなった。
これまでは人が経験や慣れで補っていた部分が、はっきり見えるようになった感覚がある。
つまり、総務相談ボットは単なる問い合わせ対応ツールではなかった。
社内規程を棚卸しし、整合性を見直すきっかけにもなったのである。
これはかなり大きな副次的効果だった。
では、NotebookLMにデメリットはないのか
現時点では、大きなデメリットはあまり感じていない。
ただし、課題がないわけではない。
たとえば、AIの回答をうのみにしてしまう人が使うと危うい。
また、規程が更新されてもアップロードした資料が古いままであれば、当然ながら回答も古い内容に引っ張られる。
個別事情が絡むケースや、例外的な判断が必要なケースも、人が見る必要がある。
そのため、現段階では全職員が自由に使う仕組みとして広げるよりも、まずは総務担当者の補助として使うほうが現実的だと感じている。
どこまでをボットに任せ、どこからを人が判断するか。
この線引きは、今後も考え続ける必要がある。
なぜ小規模な組織に向いているのか
私がこの仕組みを特におすすめしたいのは、小規模な組織である。
理由は単純で、ちょうどよいから。
問い合わせはそれなりにある。
一方で、専用システムを組むほどの予算もなければ、そこまで大がかりな仕組みも必要ない。
総務知識は少人数に偏りやすく、属人化もしやすい。
それでいて、規程の数は大企業ほど膨大ではないので、試しに作ってみるハードルも低い。
NotebookLMは、そうした中間的な組織にうまくはまる気がする。
大規模なDXではなく、手元の資料を活かした小さな業務改善として始めやすいのである。
社協のように、限られた人員で人事異動もして人を育てていかなければいけない組織にも特に相性がよいと感じている。
これから作る人に伝えたいこと
これから作るのであれば、まず大事なのは元資料を整えることである。
現行の規程に誤りがないかを確認し、できれば整理したうえでPDF化したほうがよい。
ただし、実際には作りながら規程のズレに気づくことも多い。
だから最初から完璧を求めすぎなくてもよいとも思う。
まずは試しに入れてみて、そこで見えてきた不整合を直していく、という進め方でも十分意味がある。
また、規程だけでなく、総務業務マニュアルのような資料も入れていけば、より実務的な支援に近づいていくはずである。
重要なのは、AIを便利な補助として使いながら、最後は人が確認するという姿勢を崩さないことである。
NotebookLMは、総務の属人化を減らす一歩になる
NotebookLMを試用してみて、総務の属人化を減らす可能性はかなりあるのでは、と感じている。
実際、私自身も職員から相談を受けた際に、他の職員へ確認する前にボットを使うことで、その場で対応を終えられたことがあった。
こうした積み重ねは、総務担当者の負担を減らし、組織全体の動きを少しずつよくしていくはずである。
小規模な組織でも、総務相談ボットを作る理由は十分にある。
問い合わせ対応の改善にも効くし、文書や規程の整理にもつながるからである。
完璧な仕組みでなくてもよい。
まずはスモールステップで始めてみる。
その一歩として、NotebookLMはかなり有力な選択肢だと思う。
