映画「オレンジランプ」のモデルになった丹野さんという方がいる。
仕事で講演を依頼することになり、その前日に関係者での食事会が設けられた。
この食事会が、自分の認知症に対する見方を大きく変えることになるとは思わなかった。
講演前の期待 – YouTubeで見ていた「すごい人」
講演を依頼する前から、YouTubeで丹野さんの講演を見ていた。
認知症と診断されてからも前向きに生きる姿や、
自分の経験を社会に伝えていく活動、
どれも胸に刺さるものである。
そんな丹野さんに実際に会う。
画面の向こうとこちら側では、どれほど違うのだろうか?
認知症観が変わる時
食事会の席についた瞬間から、自分の中の「認知症のイメージ」が崩れ始めた。
丹野さんは、とにかく楽しい。
営業成績東北地方ナンバー1は伊達じゃないなと。
講演では聞けないような余談も沢山聞けた。
記憶の部分に困難があっても、その場の会話を楽しみ、周りを巻き込むコミュニケーション能力は素晴らしいものだった。
「あれ?これが認知症?」
そう思ったのは、自分の中に固定観念があったからだ。
講演でも言っていたが
「目の悪い人はめがねを使う、認知症で記憶が悪くなるからスマホやメモを使う」
ということを完全に体現していた。
海外の講演すら一人で行くことができるというのは、本当にすごいことだ。
イタリアに一人旅をしてみて思ったところだが、本当に海外に一人で行くということはエネルギーが必要なことだと思う。
障害を抱えていても、それを補う工夫と前向きな姿勢があれば、できることはたくさんある。
丹野さんはそれを身をもって示していた。
丹野さんの企画力
丹野さんが話してくれた企画はどれも面白い。
それは「楽しいことをやる」ことを前提にしているからだろう。
具体的な内容は差し控えるが、丹野さんの発想力とエネルギーには驚かされた。
認知症になってからも、むしろ認知症だからこそ見える世界があり、それを社会に伝えようという姿勢とバイタリティーは本当に尊敬である。
自分も講義などで「認知症ではなく、その人を見る」ということを伝えてきた。
でも、それが本当にどういうことなのか、今回の食事会で実感した。
丹野さんが面白くてすごいのは、認知症当事者だからではない。
丹野さんという一人の人間だからこそ、その魅力や才能があるのだと気づいた。
認知症という診断名でその人のすべてを見てしまうと、本当の姿を見失ってしまう。
新たな認知症観
食事会の後、翌日の講演はさらに深い理解をもって聞くことができた。
今回得た認知症観を基に、これからの自分の仕事に活かしていきたい。
認知症を持つ人も、一人ひとり違う個性や能力、可能性を持っていること。
そして、適切な工夫と環境があれば、その人らしく生きていけること。
丹野さんとの出会いは、「認知症」という言葉の向こう側にある、一人の人間の豊かさを教えてくれた。
ありがとう、丹野さん。またご飯を食べながら、楽しい話を聞かせてください。
