“人新世の「資本論」”を読んだ。
普段あまり手に取らないジャンルの本だったが、仕事で付き合いのある方が面白いと言っていたので読んでみることに。
本書では、資本主義がどのように環境危機を引き起こし、私たちの社会に影響を与えているのかを分析している。
分析内容をマルクス経済学の視点から、資本主義の根本的な構造を見直し、持続可能な社会の可能性を探る一冊だった。
本書を通して印象的だったのは、資本主義が「欠乏を生み出すシステム」であるという指摘である。
「価値」と「使用価値」の対立という概念が紹介され、
一般的な使用価値は人々の欲求を満たすためのものである一方、
価値は市場経済の中でのみ成立し、人為的に作られた希少性によって動かされるとされている。
人に作られた希少性のためにお金を稼ぎ、本当に自分が必要とするものではないものに時間を浪費するということは避けたい。
また、現代は経済成長が進んでいるにもかかわらず、多くの人が「貧しさ」を感じているという点も良い指摘だと感じた。
生産力の向上が目的化し、余白が生まれると新たな生産へと向かい、終わりなく働き続けるという生産力史上主義のループが続く。
例えば、エコカーが登場して燃費が向上しても、大型化したSUVが主流になり、結果として燃料の使用量が減らないように、技術革新は結局どこか別の地域に負担を転嫁するだけなのではないかという疑問が投げかけられている。
“人新世の「資本論」”を読んで、自分が生きている社会の仕組みについて改めて考えさせられた。
新自由主義の下で、私たちは無限の欲望に踊らされ、作られた価値を追い求める。
実際、本当の豊かさとは何なのか?
人と比べるのではなく、自分が本当に必要だと思うものを見極め、大事にすることこそが大切なのではないかと感じた。
普段読まないジャンルだったから、読むのには時間がかかったが、それだけの価値があった一冊だったと思う。
歴史を学び、今もなお研究が進んでいるマルクスの思想に触れたことで、”マルクス=共産主義”という固定観念が覆されたことも大きな収穫だった。
何事も「過去に学んだから終わり」ではなく、知識は常に更新し続けることが重要である。
なんにせ、誰かの推薦で本を読むのも、なかなか良い体験だ。
またそのうちに誰かのお気に入りの一冊を読んでみようかと思う。